ニチアスの耐火性能偽装問題
耐震構造の偽装問題が鳴りやまないところに今度は耐火構造にも偽装問題が発覚しました。耐火建材を販売しているニチアスが、2001年2月~2005年8月に認定された建材の耐火性能を偽って大臣認定を不正に取得していたのです。
耐火性能とは

ヘーベルハウス不燃材軒天
住宅の燃えにくさの指標として「耐火」とか「防火」という言葉が使われますが、建築基準法では厳密に区別して扱われています。住宅メーカーのカタログを見るときにも注意してみないと、火災の時に延焼しにくいと思っていたのに案外性能が低いこともあります。
建築基準法が定めている「耐火」「準耐火」「防火」の意味を解説します。
住宅の耐火構造の定義
- 耐火構造住宅とは
- 耐火構造とは、火災に対して最も高い防火性能を有している建築物を指します。一般には高層ビルや高層マンションに適用され、通常火災による火熱によっても1時間~3時間は変形、溶融、破壊その他損傷を生じないものであることとされています。
- 準耐火構造住宅とは
- 準耐火構造とは、耐火構造に次いで火災に対して高い防火性能を有している建築物を指します。一般には多くの人が集まる公共施設や商業施設などに適用され、通常火災による火熱によっても30分~45分は変形、溶融、破壊その他損傷を生じないものであることとされています。
- 防火構造住宅とは
- 防火構造とは、外壁や軒裏に国交省の定めた構造または認められた防火性能に合格した材料を使用した建築物を言います。一般の戸建て住宅に適用されることが多く、建築物の周りに発生する通常火災による延焼を抑制するため、30分は変形、溶融、破壊その他損傷を生じないものであることとされています。
ニチアスの耐火性能偽装とは
2007年10月30日に建材の耐火偽装問題を起こしたニチアスという会社、あまり聞き慣れない会社ですが、創業が1896年と古い会社です。社名は元「日本アスベスト」でしたが、1981年に「ニチアス」に社名変更しています。
ニチアスは耐火断熱材などを主に製造しているほか、高機能樹脂製品、シール材、自動車部品などを手がけているだけでなく、エレクトロニクス関連から 医療、食品、建築にも及んでいます。
ニチアスが耐火性能を偽って大臣認定を不正に取得していた建材は次の通り
ニチアスの耐火性能偽装建材
- 準耐火構造の軒下部 - 18種類(さらに増加見込み)
- 耐火構造の間仕切り壁 - 2種類
上記の建材は、2001年2月~2005年8月に認定を受けたもので、偽装の手口は民間性能評価機関による試験を受けるとき、外から見えない内側の材料を水に浸し、燃えにくくしていたといいます。
これらの建材の耐火性能は認定品の2/3しかなく、45分の耐火性が必要な部分で実際には25~30分程度の耐火性能しか得られないと言います。
11月17,18日に国土交通省が追加でテストしたところ、これまで耐火性能が取り消された2件の軒裏建材に追加して、さらに2件(QF030RS-0037、板厚 10mm 以上およびQF030RS-0039、板厚 10mm 以上)が性能基準を満たしていないとして、認定を取り消されました。
この件については、ニチアスは納得しがたい弁明をしています。
国土交通省がテストしたのは板厚 10mmのもので、板厚 10mmの製品は一切出荷しておらず出荷しているのは板厚 11mm以上の製品だけだと言います。つまり、板厚 11mm以上の軒裏建材は耐火性能を満たしているはずだと言っているのです。信じがたいコメントですが、このコメントを真に受けて今回認定取り消しとなった製品(QF030RS-0037,QF030RS-0039)を使っているハウスメーカーも板厚 11mm以上なので耐火性能は満たしているはずだとコメントしています。
さて、ニチアス製建材を使用している住宅に住んでいる住民の方は、今回のニチアスおよびハウスメーカーの対応にどのように感じられるでしょうか。
ニチアスホームページ
ニチアスから建材供給を受けているハウスメーカー
ニチアスは防火用建材の大手ですので、多くのハウスメーカーがニチアス製の建材を使用していると思われます。ニチアスの不正建材は約10万棟に使用されていると発表されていますが、さらにこの数字が大きくなる可能性もあります。
ニチアスの発表を受けて、高い耐火性能を謳っている旭化成ホームズの「ヘーベルハウス」はニチアスの建材使用を認め、早急に無償改修すると発表しました。
旭化成ホームズは、自社のホームページでニチアス製建材を使用した住宅の販売期間と使用部分を公表し、無償で改修することを公表しています。住友林業もニチアス製建材を使用した住宅があったことを公表しています。住友林業では該当物件が11棟と非常に少ないとのことです。
ニチアス製建材が使用されていることを報道されたミサワホームは急遽コメントを発表しましたが、改修などを行うのかは未定とのことです。
|
いち早くニチアス製耐火偽装建材使用を認めた旭化成ホームズに続いて、ミサワホーム、住友林業などがニチアス建材の使用を認めるコメントを出しています。
11月17,18日の国土交通省による追加テストで、準耐火構造の軒裏建材の認証取り消し製品が増えました。これによりさらに、偽造耐火建材を使用しているハウスメーカーが増えるのではないでしょうか。早めに公表するハウスメーカーの方が情報公開度が高いと言えます。
東洋ゴム工業の耐火偽装建材について
2007年11月5日報道では、東洋ゴム工業が1992年から2004年に耐火性能試験を受け大臣認定を受けた建材用断熱パネルで耐熱性能に偽装があったことを認めました。
東洋ゴム工業は性能試験を受けるときだけ特殊な薬剤を混入させ、耐火性能を高めていたとのこと。耐火偽装された断熱パネルの出荷先は▽店舗92件▽工場48件▽倉庫29件▽その他7件です。一般の戸建て住宅には使用されていないようなので、ここでの詳細説明はこの程度にしておきます。