日本の住宅は欧米に比べて住宅寿命が短い(30年~40年)と言われています。住宅寿命を伸ばすことで住宅資産価値の維持向上とCO2削減、産業廃棄物削減、省エネ化が実現できるとして、超長期住宅(200年住宅)を目指す取り組みが政府や住宅メーカーを中心に進められています。
(参照:200年住宅は実現するか)
長期優良住宅先導的モデル住宅とは
福田前首相の肝いりで始まった200年住宅プロジェクトは、首相退陣と共に先行きが怪しくなっていました。しかし、景気高揚を後押しする観点から住宅産業建て直しも叫ばれ、超長期優良住宅への減税措置を導入する法律「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成20年12月5日に成立し、平成21年6月4日から施行されることになりました。
(参照:長期優良住宅法関連情報 - 国土交通省)
この法律の成立により、200年住宅の発想に呼応して国土交通省が平成20年度より始めた「超長期住宅先導的モデル事業」も名称を「長期優良住宅先導的モデル事業」に変更し、継続することになりました。
「長期優良住宅に関する先導的な提案を広く公募し、それを評価・採択する。採択された事業については、モデル事業として費用の一部を国から補助する。」というものです。
募集に当たっては、次のような住宅関連5部門が規定されました。
モデル事業が募集する提案事業
- 住宅の新築 (戸建住宅・共同住宅)
- 既存住宅等の改修
- 維持管理・流通等のシステムの整備
- 技術の検証
- 情報提供および普及
長期優良住宅先導的モデル事業として認められ、補助金を得るためには審査が行われます。選定は独立行政法人建築研究所が行いますが、平成21年6月4日に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の影響もあり、提案には次の要件を満たす必要があります。
長期優良住宅先導モデルに必要な要件 |
項目 |
概要 |
創意工夫 |
先導的な材料・技術・システム等が導入されるなど、長期優良住宅にふさわしい提案や創意工夫を含むものであること。 |
普及・啓蒙 |
公開などにより、長期優良住宅の普及・啓発に効果が高いと認められるものであること。 |
長期優良住宅 認定を受ける |
「住宅の新築」については、原則として、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」第6条に規定する長期優良住宅建築等計画の認定基準を満たすものであること。法施行後は、法施行前に建築確認申請を行っているものをのぞき、原則として、法第5条に規定する長期優良住宅建築等計画の認定を受けるものとする。 |
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補助金も期待できるモデル事業
超長期住宅先導モデル住宅として採択されると、次のような補助金が支給されます。
- 戸建て住宅の場合
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上限 200万円/1戸
- 住宅団地の建設や共同住宅の場合
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上限 2億円/1住宅団地
- 全体計算方式
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補助金額を建設費の1割以内として算定する方式
- 比較設計方式
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先導的な提案がされているものとされていないものとの工事費を比較して、算出した額の3分の2以内の額を補助金額とする方式
第1回採択ハウスメーカー&プロジェクト紹介
2008年(平成20年)4月に募集された第一回超長期住宅先導モデル住宅公募で、603件の応募がありました。応募の多くは戸建て新築住宅事業部門でした。採択されたのはその中で40件にとどまりました。審査では「住宅の長寿命化へ向けた今後の方向性を明確に示す取組みが含まれているもの」が選ばれ、長寿命効果に具体性がないものは採用が見送られたようです。
下表では、新築住宅部門でモデル住宅に採択されたハウスメーカー主体のプロジェクトを紹介します。
第一回超長期住宅先導モデル住宅~採択プロジェクト~ |
部門 |
社名 |
プロジェクト名 |
評価 |
詳細 ページ |
新築住宅 |
三井ホーム |
超長期住宅システム |
土台等腐朽しやすい部分の構造躯体の耐久性の向上、維持管理容易性等きめ細かな取組みのほか、売却時の再保証や買取保証システム等流通への配慮などを総合的に評価 |
三井ホーム 詳細ページ |
エス・バイ・エル |
Σ超長期住宅モデルプロジェクト |
木質系のプレハブ住宅について、耐久性の向上等により構造躯体の長寿命化を図るとともに、点検やメンテナンスを継続的に実施していくことを提案 |
エス・バイ・エル 詳細ページ |
富士 ハウス |
資産価値の高い住まい |
長期利用時の部材のたわみ、間仕切撤去等に対応できるゆとりの確保、定期点検に加え居住者に交換時や災害時における点検依頼の実施、省令準耐火構造の採用など、きめ細かい総合的な取組みを評価 |
富士ハウス 詳細ページ |
ミサワ インターナショナル |
HABITA 超長期住宅 |
5寸角の国産材の柱・土台などを使った真壁での外壁通気工法は耐久性の観点から評価した。また、学識者による街並みデザイン評価委員会を組織し、街並みに関する取組みを行うなど、多分野に渡る総合的な取組みとしても評価 |
ミサワ インターナショナル 詳細ページ |
三洋ホームズ |
CHS・NEXT“安心見える化”プロジェクト |
管理にあたって、床下点検ロボットや水漏れセンサーを利用するとともに、この点検画像や地震情報の履歴管理への取り込み、さらにこれらシステムの利用に関してアンケートを行うなど、技術検証的な取組みを評価 |
三洋 ホームズ 詳細ページ |
旭化成ホームズ |
ヘーベルハウス ロングライフ住宅 |
既存住宅の売買での買取保証の実施や、住み替え支援の取り組みは、既存住宅の流通促進に資するものとして評価 |
旭化成 ホームズ 詳細ページ |
住友 林業 |
My Forest 大樹・BF・北海道仕様 |
日射、通風等に配慮したパッシブ工法を取り入れた省エネ対策への取組みのほか、専用電話による24時間365日のアフター相談の仕組み、建物譲渡に伴う保証の継続等、維持管理流通への取組みを総合的に評価 |
住友林業 詳細ページ |
積水 ハウス |
まちなみ分譲モデル |
廃棄物の再資源化への取組みは、他に類似する提案が少なく、資源の有効活用に寄与する提案としても評価した。さらに、公開の方法としてまちか
ど展示場を採用し、間取り変更をみせるなど、普及啓発に寄与するものとして期待 |
積水ハウス 詳細ページ |
大和 ハウス |
住み継ぎ~第三者間~家族間から |
すまいの「見える化」をテーマに、住宅履歴システムにおける居住者自身の管理のサポートや省エネ等の環境の見える化を進める取組みは今後のあり方として評価した。さらに、公開の方法としてまちかど展示場を採用するなど、普及啓発に寄与するものとしても期待 |
大和ハウス 詳細ページ |
パナホーム |
TVマイホームカルテシステム サスティナブル住宅 |
メンテナンスについては、従来、供給者側の定期メンテナンスを受ける立場にあった居住者が、供給者と居住者の間に双方向テレビによるコミュニケーションシステムを構築することで、自ら性能を認識し、維持管理することを促す提案であるが、今後の一つの方向を示す実証的な取組みとして評価 |
パナホーム 詳細ページ |
トヨタホーム |
ウォールデンテラスおゆみ野 分譲プロジェクト |
まちづくりにおいては、植物による環境改善に加え、緑化管理についてのサポートの仕組みを導入する取組みが特徴的なものとして評価 |
トヨタホーム 詳細ページ |
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(参照:超長期住宅先導的モデル事業 第1回採択プロジェクト)
第2回採択ハウスメーカー&プロジェクト紹介
超長期住宅先導モデル住宅は第一回以降も継続的に実施されています。第二回は平成20年(2008年)8月~9月に募集され、325件の応募がありました。応募の内3/4は「住宅の新築」部門で戸建て住宅が多くを占めました。採択されたのはその中で48件となりました。
第二回も前回同様独自性やメッセージ性のある提案は少ないものの、内容が整理され全体としてまとまりのあるものが多くなりました。審査では「理念の明快さ・整合性、提案内容の総合性、実現可能性、広範な普及・波及効果等」を勘案して選ばれました。
下表では、住宅の新築部門でモデル住宅に採択されたハウスメーカー主体のプロジェクトを紹介します。
第二回超長期住宅先導モデル住宅~採択プロジェクト~ |
部門 |
社名 |
プロジェクト名 |
評価 |
詳細 ページ |
新築住宅 |
セキスイハイム |
長期利用 支援住宅 |
耐震性に関する様々な取組み、居住者の省エネ意識の持続を支援する仕組み、既存住宅の借上げ等の仕組みなどを評価 |
セキスイハイム 詳細ページ |
ミサワ ホーム |
ミサワホーム超長期住宅 |
耐震性に関する種々の取組みやパッシブによる省エネルギー性能の向上の取組み、既存住宅の買取や借り上げ等の多様な取組みなどを評価 |
ミサワホーム 詳細ページ |
東急 ホームズ |
世代を超えて住み継がれる住宅 |
多くの部位で耐久性への対策を行うことのほか、履歴情報と関連づけながら、グループ企業を活用して、借上げ、買取り、賃貸化等の様々なサービス
をひとつなぎとした既存住宅の流通促進を実施する取組みなどを評価 |
東急ホームズ評価 詳細ページ |
スウェーデン ハウス |
快適性が 持続する家 |
再販・住み替えサポートなどの流通促進の取組みを強化していることを評価 |
スウェーデン ハウス 詳細ページ |
一条 工務店 |
夢の家 超長期モデル |
多くの部位で耐久性への対策を行うほか、各項目における一定の取組みを評価 |
一条工務店 詳細ページ |
トステム株式会社 |
自然採暖 採涼設計の家 |
自立循環住宅設計をベースにした多様な取組みを評価したほか、防蟻対策の再施工に向けた工夫などを評価 |
アイフルホーム 詳細ページ |
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超長期住宅先導モデル住宅は第2回以降も継続的に募集され、第三回は平成21年(2009年)1月以降に募集されるました。
(参照:超長期住宅先導的モデル事業)
21年度第1回採択ハウスメーカー&プロジェクト紹介
第三回目となる平成二十一年度第一回「超長期住宅先導モデル住宅」は、「長期優良住宅普及促進法」が成立したこともあり名称を「長期優良住宅先導的モデル」に改められました。
今回は応募総数311件でほぼ前回と同じ応募数で、内「住宅の新築」部門がほぼ75%を占めるという状況も変わりませんでした。採択されたのはその中で75件となりました。
新築住宅は法律により認定基準が公開されたことなどもあり、独創的な提案は少なくなりましたが、内容が整理され、まとまった提案が多くなりました。審査では「住宅の長寿命化に対する取り組み全般や、認定基準にはない設計上の工夫や体制整備、新たな取り組み」などを勘案して選ばれています。
下表では「住宅の新築・戸建て部門」でモデル住宅に採択されたハウスメーカー主体のプロジェクトを紹介します。
長期優良住宅先導モデル事業は次回も公募されています。次は平成21年(2009年)7月以降に募集される予定です。
(参照:長期優良住宅先導的モデル事業)